塩田

 能登半島の珠洲市には、昔ながらのやり方で塩を作っているところが、いくつかある。塩水を煮る小屋の脇に、平らにならした砂地があり、ここにポンプで海水を汲み上げて撒く。ポンプが登場する前は、桶に海水を汲み、海と塩田を何度も往復した。

 能楽に、「松風」という曲目がある。松風、村雨という汐汲みの若い姉妹が、在原業平(だったかな?)に恋をするという物語だ。美しく、せつない恋物語だが、実際の塩作りを知ると、見方がいささか変わる。可憐な姉妹と、汐汲みの過酷な作業が、どうもマッチしない。この姉妹、顔は可愛くても、体はたくましかったに違いない。腕には力こぶができ、鍛え上げた足腰は、どっしりしていただろう。

 珠洲市の塩はネット販売もしていて、天然塩は注目されている。家に戻って、この塩でおにぎりを作ったが、同じお米なのに、ご飯の味が違った。米の甘みを際立たせる塩だ。

2019年05月27日