注文品の素焼をしようと電気窯のスイッチを入れたら、故障していた。炉内温度を示す針が狂い、数分たつと通電していることを表すランプが消えた。今週の火曜日のこと。いろいろ試し、焼成できないとわかり、メーカーに電話した。ショックと気疲れで、体から力が抜けた。

 窯の内部を取り替えるメンテナンスをすることになり、昨日、メーカーの人が窯を取りに来た。スケジュール上、修理が完了するまで、一ヶ月程度かかるとのこと。注文品の納入には、なんとか間に合うだろう。

 このメーカーの社長さんに、この窯の購入を検討しているとき、会ったことがある。職人気質の一徹な人柄で、陶芸を始めたばかりの、若く頼りない私に、厳しく容赦ない言葉を浴びせた。かなりへこんだことを、今でも覚えている。20年以上前の話だ。
 へこみ、怒り、それでも窯を買い、その後、社長さんの言葉に嘘偽りがないことを知った。陶芸の道は厳しかったからだ。

 昨日、故障した窯を取りに来た若者は、社長さんのお孫さんだった。祖父は10年前に亡くなりましたと、お祖父様とはあまり似ない、柔和な顔立ちの若者は言った。

2018年12月22日