パリの獣医さん

 図書館で、ふと、見つけた本。日本での出版の日付を見ると、25年前になっている。フランスの著名な獣医師であり動物学者でもある著者のエッセイだ。邦題が、『パリの獣医さん』。

 犬とネコの、さまざまなエピソードがいきいきと描かれ、笑ったり泣いたりしながら、読み終えた。分厚い本だが、内容があまりにも面白く、刺激に満ちているので、本の厚みは苦ではない。

 動物から人間が学ぶ、奥深いもろもろのことについて、著者は繰り返し語っている。私自身、思い当たることが多い。

 日本の法律では、動物は生き物ではなく、物として扱われている。動物を殺すことは、「器物損壊」になる。この認識が、人間の意識の中にまだまだ深く染み渡っているように思える。「パリの獣医さん」は、人は犬やネコを、畑のカブや人参ぐらいにしか思っていないと書いている。だから、いらなくなった野菜を捨てるように、持て余したペットをうっちゃるのだ。

 動物には知能と感情がある。身近に動物がいれば、それは自然にわかる。知能と感情を持っている生き物を、人間は捨てたり殺したりしているのだ。

2019年01月15日