幽霊

 人間が道を歩くのに混じって、霊も浮遊していると言った人がいる。生身の人間が知らないで霊の体(?)を通り抜けているとか……。ホントかな? 別に怖がらせるためにそんなことを言っているのではないと思うから、その人の目にはそう見えるのだろう。

 幽霊は、どうして怖いのだろう。死は、どうして不気味なのだろう。

 死が不気味なのは、死体が気持ち悪いからだ。人間も動物も、生命が途絶えた肉体は、受け入れ難い恐ろしさを持った物体でしかない。死が不気味だから、幽霊も不気味で怖いのだろう。

 なぜこんなことを考えるかというと、いずれ私も死んで霊になるからだ。幽霊になってしばらくこの地上をウロウロするのかもしれないし、思いきりよく空のかなたに飛んでいってしまうのかもしれないが、確実に私も霊になるのだ。
 霊になると、どんな気分なのか、どんな感じがするのかと、妙にリアルに考えることがある。

 輪廻転生を信じるならば、(私は信じているけれど)、霊になるとどんな感じで、あの世はどういうものなのか、私は本当は知っていることになる。さんざんあの世で過ごして、それからこの世に生まれ出たのだから、あの世のことはようく知っているはずだ。しかし生きている人間には、あの世の記憶はない。

 何なんだろうね、人間って。

 自分が霊になったとき、生きている人間から怖がられたくないなあ、と思う。

2018年08月10日