富士山

 5年前まで、富士急ハイランドの近くに住んでいた。とてつもなく大きな富士山を毎日見ていた。

 いつも富士山が視野の中にあると、有り難みを感じなくなる。そのうち見向きもしなくなる。このどでかい雪山がなかったら、麓の町はもっと暖かいのにと、愚痴をこぼしたりする。

 今朝のニュース映像で、裾野のほうまで真っ白になった富士山を見て、ふと戻りたくなった。巨大な山を、間近で見たくなった。富士の姿に飽きて、ろくに眺めもしないで暮らしていた頃を思い出し、もったいないことをしたものだと思った。

 貴重なものも、身近にあると、粗雑に扱ってしまうのが、人間なんだな、と。

 家族にしたってそうだ。自分にとって大切なものなのに、いるのが当たり前になり、ときにはストレスの種ともなるから、粗略に扱ってしまうのだ。人って、ほんとにワガママだ。

 

 

 

2019年03月05日