空気の匂い

 夕方、野良猫のマダに餌をやろうと、サッシの掃出し窓を開けると、春の宵の空気の匂いがする。芳しい香り。植物が根や茎の内部に、いろんなものを用意している、その命のみずみずしい匂いだ。

 ひところ元気のなかったマダは、缶詰のフードに変えたせいか、食欲が出てきたみたいだ。

 ネコの島で、糞の掃除が追いつかず、問題になっていると、ニュースで報じていた。島民が高齢で、糞の始末をする人が少なくなったとか。ネコのおかげて観光客が大勢やって来るのだから、誰かに掃除を押し付けず、みんなで協力すればいいのに。

 ドイツには犬税というものがあり、飼い主が払った税金で、道路の糞の掃除などをするのだそうだ。ドイツ人は犬の散歩のとき、日本人のように几帳面に糞を片付けないらしい。

 以前、妹が犬の散歩中に、近所に住む俳優のN氏に、塀の際に犬がオシッコをしたと、したたか文句を言われた。それはN氏の勘違いで、実際にはそのとき犬は地面を嗅ぎ回っていただけで、オシッコはしていなかったのだ。それ以来、妹はN氏が大嫌いになった。テレビにN氏が映ると、何かしら目の敵にしているような表情を浮かべる。

 動物の糞尿問題は、たしかに根が深い。

 ウチの芝生は野良ネコたちのトイレにもなっている。春の匂いに、ときどきウンチの臭いも混じるのだ。

 

 

2019年03月06日