源氏物語
一念発起して、谷崎潤一郎訳の源氏物語を読み始めた。六条の御息所の生霊が、葵の上を呪い殺す章まで読み進んだ。
平安時代は死霊、生霊の存在がまともに信じられていたから、この話は人々を震え上がらせたことだろう。現実的に見れば、葵の上は重い病気にかかって、こと切れたのだけれど。
救いようのない不細工な容貌に生まれついた末摘花、強い怨念や嫉妬を、自分でもどうしようもない、知的で気位の高い六条の御息所。男に愛されにくいこれらの登場人物に、哀れを感じてしまう。作者はこの二人の女性に、あまり気持ちを寄り添わせていない。すんなりと人生を生きられない人々を、もっと柔らかく包み込んであげたらいいのにと思う。
それにしても、光源氏は好色すぎる。今、こういう人がいたら、精神鑑定やカウンセリングを受けたほうがいいんじゃないかと思うくらいだ。他人の家に無断で忍び入り、戸や屏風の陰からその家の女たちを盗み見て、挙句の果ては人妻の寝室に深夜入り込んで、一緒に寝てしまうのだ。なんとしたことか!
それとも平安時代は、これが普通だったのだろうか。