死ぬということ

 癌になった叔母の介護のために、山梨の工房をたたみ、東京の実家に移り住んだ。叔母は一年ほどの闘病の末、あの世に旅立った。

 叔母の死を通して、死というものがリアルに心の中に定着した。真正面から死に向き合うようになった。

 自分が死ぬときは、どんな感じなのだろう。叔母はどんなことを感じながら、死を迎えたのだろう。死んでしまった人は、伝える手段を持たないから、死がどういうものかを語ることができない。あの世へ旅立った人が、死ぬとはこういうことだよと、話してくれたら、どんなにいいだろうと思う。

 私達は、結局のところ、死から顔をそむけて生きているのだと思う。動物でも人間でも、死体は不気味で怖い。おぞましいイメージが死というものを分厚く包み込んでいるから、私達はなるべく死について考えまいとする。

 でも本当は、もっと死に向き合ったほうがいいような気がする。いずれ必ずそこに至るものなのだから、心の奥で、静かに死について考えることも必要なのではないだろうか。

 

2019年02月27日