お茶屋美術館

 ひがし茶屋町にある。文政3年に建てられたお茶屋を、当時のままに残し、芸妓さんたちが使っていた簪や化粧道具、酒器類などが豊富に展示してある。

 簪はどれも繊細な作りで、見飽きない。化粧道具は興味深いし、九谷焼の徳利や盃は、ため息が出るほどだ。

 二階が座敷になっていて、壁が鮮やかな紅色の部屋と、それとは対照的な群青色の部屋がある。紅は弁柄、青はラピスラズリの粉が使われている。火鉢には螺鈿のような装飾が施され、襖の引手は一般家庭では見ない、可憐な形に作られている。

 眺めているだけで、おしろいの匂いが漂ってくるような、なまめかしさがあり、同時に心の底にずんと響く凄みがある。この凄みは何だろう。お茶屋という商売の、世間に立ち向かっていく凄み、残酷な世間に負けまいと、冷淡な世間をいっそこちらが呑み込んでやろうとしているような、凄み……。

 このお茶屋の過去に、ふっと引きずり込まれ、のめり込む自分がいる。

 

 

2019年05月18日