コロナ禍Ⅰ

 多くの国が都市封鎖をしていた、3月から4月にかけて、世界の大気汚染はめざましく改善された。ヨーロッパでは、ロックダウンの結果、温室効果ガスが約25パーセント減少した。

 ひどい大気汚染が続いている中国では、大都市の空気がきれいになり、大気汚染が原因の病気が減った。データによると数万人規模の人々の命が救われた。コロナで人は死んだが、コロナで助かった命も多い。

 ロックダウン前と、ロックダウンが始まってからの、タージマハールの写真が、テレビで紹介されていた。都市封鎖前のタージマハールは、薄い靄に取り巻かれたようだが、皆が家に閉じこもってからのタージマハールは、透明な大気の中に、美しい姿を余すところなく見せている。

 二酸化炭素の排出による温暖化と異常気象を改善することは、不可能に近いと諦めていた。今回のコロナ騒ぎで、地球の自然を正常な状態に戻すことへの希望が湧いてきた。工場をストップし、車を走らせなくしたら、たった2ヶ月やそこらで、大気は格段にきれいになったのだ。このことは、深い驚きだった。

 もちろん、自然環境を守るために経済を止めることはできない。しかし、これまで通りの経済活動を続けていたら、南極、北極の氷は溶け、シベリアの永久凍土も溶け、気象はさらに狂い、未知のウイルスが再び蔓延する。自然を破壊せずに仕事をする新しい道を、切り開いていかなければならない。

 ウイルスは、人口が増えて、人間の生活圏が自然を侵食した結果、人間の生活の中に現れるものらしい。また、永久凍土の中には、動物の死骸に混じってさまざまな細菌やウイルスが、封じ込められているという。凍土が溶け始めれば、それとともにいろいろな細菌やウイルスが地表に出てくる。

 今まで人類は、自然と向き合おうとしなかった。真摯な姿勢で、自然を知ろうとしなかった。経済のために自然を壊し続け、それを生きるための当然の権利のように思ってきた。その生き方がもはや通用しないことを、コロナは気付かせてくれている。

2020年06月28日